SSブログ

掏摸 中村文則 [本 livre]

とても軽快に読める作品。

一級の掏摸師が、掏摸を通りして人の諸相を描く。

 

章立てがとても短くて、それが読みやすさと掏摸行為という11秒を刻々と表現する描写、脅迫的なスピード感を生むことにつながっている。

 

おもしろいのは、主人公自身を内の表現だと、「僕」と表現し、外(他人と会話するななど)では、「俺」と表現すること。これで、「俺」と表現することで、対外的には強さを表現し、内在的には、「僕」と表現することによって、弱さを表現しているように思える。 

たびたび文章のなかにドストエフスキーが現れる。ラスコリニコフの精神の呵責を描いた「罪と罰」とこの作品は少なからずリンクされる部分はある。しかし、「罪と罰」のあの描き方を体感してしまった人にとっては、この作品は物足りなさを感じてしまうだろう。読みすさ、スピード感を備えたこの「掏摸」は、普段の私たちでは知り得ないアングラな世界に誘ってくれる。

掏摸

掏摸

  • 作者: 中村 文則
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2009/10/10
  • メディア: 単行本


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。