クララ・シューマン 愛の協奏曲 [映画 le cinema]
クララ・シューマン、ロベルト・シューマン、ヨハネス・ブラームスの三角関係は、たとえクラシックファンでなくても、有名である。しかし、この3人の関係は、果たして、多くの人が思う三角関係というのが妥当か、というところをこの作品は描いている。
ロベルト・シューマンは、クララ・シューマンと出会い、彼の音楽の才能を世に知らしめた。名声を得たロベルト・シューマンは、ブラームス青年を発掘した。ブラームスは、クララを愛した。この3人の間にはどろどろとしたものはなく、むしろ、芸術家同士の才をお互いに尊敬しあった、というが今作のテーマかもしれない。
しかしながら、苦悩し、統合失調症と闘うロベルト・シューマンを見事に演じた、パスカル・グレゴリー、圧巻です。ブラームスは、個人的に思っている雰囲気ではなく、かなり軽めな感じに描かれているのは、青年だからでしょうか。クララはこの3人の中で最もしっかりしています。指揮は女性の仕事ではないとされていた当時の慣習を見事に打ち破った姿は頼もしささえ感じます。
3人の芸術家を巡る今作は、それぞれが音楽の創作者としてはもちろん、人として興味深い存在である、ということを改めて感じました。
久しぶりのドイツ語映画。でも出ている俳優はフランス人が多かったりして。シャンソニア劇場から、心温まる [映画 le cinema]
舞台は、1936年、戦争やファシストの台頭と暗い影がしのびつつある、パリ“郊外”のある劇場。その劇場も経営難で閉じるしかない、そんな中、劇場を生活の場としてきた人たちの、劇場復活にかける情熱を、テンポ良く、そして、コミカルに、シャンソンを巧みに使って描いています。そして、劇人たちの人生それぞれも、36年に生きていく人たちのそれぞれの生活を巧みに描いています。
この映画は、普通に描いてしまうと暗い映画になりかねない映画です。しかし、音楽を通して、そして、コメディにしあげることで、その暗さを逆に明るく、観やすい映画になっています。
はたもすると、この映画はどこにでもある映画になりかねませんが、(ミュージカル映画は特にミュージカルという部分に力がいってしまう)ピゴワルとその息子ジョジョの絆の深さを映画の芯にすることで、ぶれない映画となっています。そして、しっかりとした音楽もそれを支えています。
反面、後半の舞台でのミュージカルシーンは、少し大げさ(La Mer)。それでもこの映画を許せて、心温まるのは、36年-45年当時のパリの一角の人たちをとても活き活きとと描いているからでしょう。
ピゴワルとジョジョの再会のシーンは不覚にも涙が出てしまいました。いい映画です。
ミュージカル映画はやっぱりサントラも欲しくなりますね!
映画「幸せはシャンソニア劇場から」オリジナル・サウンドトラック
- アーティスト: サントラ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2009/09/02
- メディア: CD
↓輸入盤ですが、ちゃんと歌詞がすべて入っています!
夏時間の庭 [映画 le cinema]
なんとなく、オルセー美術館というのが頭の中にあって、スクリプト自体を考えると、「受け継ぐ」というのがキーワードといっていいのかと思うのですが、それににしても、少し冴えないのです。役者陣 特にピノシュなんかが出ているんだから、もう少しいい映画に作り上げれば、と思うのですが、残念な映画です。フランス映画なんだから、もう少し深くスクリプトを作り上げた映画であったなら、と思ってしまうのは、フランス映画への幻想でしょうか。フランス映画はこんなものではないはずです。シャンソニア劇場のほうが考えさせられたし、納得して観れたのは思い違いなんでしょうか。緑の中の家のイメージしか残っていません。
斜陽 [映画 le cinema]
太宰の代表作といってもいい、「斜陽」はどうだろうか。とても退廃的である。アート作品(映画)のようである。原作自体が退廃的であるから、といってしまえばそれまでだが、文字とセリフの混在とカメラワーク、音声の撮り方がさらにそうさせているのかもしれない。原作とは違って、現代的にアレンジされている。そこがヴィヨンの妻とは違っているところではあるが、その現代風のアレンジの何とも不安定さが、この映画の見所なのかもしれない。母の病名が結核からがんになるところはよいが、医師が突然がんと告知するところなんかは断片的である。そう、この映画は、断片の連続で成り立っている。断片と断片をつなぐのが、フェードアウトする映像であり、文字(言葉)なのだ。セリフは、他の映画に比べて少なく、音声も意図的であろうがクリアではなく、わざと反響された音である。映画という映像を見ていることをこちらに実感させる作り方なのだ。そして。90分前後である。たぶん、これ以上は観ていられない。詳しい展開は必要ないのだ。太宰の原作を知らなくとも、である。断片が断片をひきよせ、このような家族やその周辺は今や過去の存在だろう。
しかしながら、最後のあたりは早急すぎる気がする。そこが惜しいところである。太宰の原作の範疇から出ようとして出れずにもがいている、そんな印象も受ける。斜陽というとうの昔の話を現代風にした結果が、これなのかもしれない。たまには、映像作品としての映画を観たいなら、こういう映画もよいのかもしれない。
ココ・シャネル それは時代をつくった人 [映画 le cinema]
今回は、シャーリー・マクレーン主演の、「ココ・シャネル COCO CHANEL」を。
CHANEL、というと、フランスの高級ブランドの一つ。しかし、そのブランドの成り立ち、いえ、ココ・シャネルという人、一人によって作り上げられた、CHANELというブランドは、フランスだけではなく、世界中の女性を解放させた。
マクレーンの晩年のココよりも、回想の中でのココ、自立して生きる女性として成長していくココの姿が印象的です。そして、CHANELは、ココの触覚によって成立していったことがよくわかります。はじめは、帽子作り、そして、パフュメ No.5 プレタポルテ。ココの生涯とそれらがリンクしている。本とかをみていけばわかるのだろうけれど、映像としてみると非常によくわかる。
マクレーンの芝居もさることながら、回想の若きココを演じるバルボラ・ボブローヴァ。これが美しい。ほんと美しい。そして、果敢。縛られた女性から解放をしていくココをうまく、そして、勇敢に演じています。
回想に入るところがモノクロになるところが少し安直で、フランスを舞台にした映画なのに、フランス語ではない、というところ。特に、新聞はフランス語なのに、会話は英語というのがいつもの通りぎこちなさを感じるところではありますが、CHANELはただ、人を着飾るためのブランドではない、ということ、それを伝えていることだけは確かです。
次は、COCO anvat CHANEL ですね。ここまできたら。
それでも恋するバルセロナ [映画 le cinema]
この映画を通してみると、バルセロナという場所から思い描くラテンの陽気さよりも、ガウディやミロらが創出した、アンビヴァレントな(現代)芸術作品と、人それ自身のアンビヴァレントさを演出するためには、バルセロナなのだ、と思うのです。主人公が恋するのは、芸術家であり、成り行きの三角関係の、それでもそこに調和がとれた関係は、たとえニューヨークであったら、もっといやなものに描かれてしまう可能性があります。しかし、バルセロナ。バルセロナだったからこそ、この映画の、さまざまなアンビヴァレントさは、不安定さのなかでも主張している気がするのです。人はそれぞれ、諸要素が組み合わさっていて、私は私であると。
サマーウォーズ [映画 le cinema]
日テレでやけにCMやってたりするので、気になっていたりしたものですから。
セカンドライフとかそのあたりがもとなのかな。アバター大活躍で、でも、実は、人と人との関係が必要なんだ、という題材的にはよくあるのですが、細田監督の場面展開のうまさが光る映画です。
そして、この映画。長野県上田が舞台です。夏の、ちょうど、甲子園長野県大会の準決勝も同時進行します。実名高校が出てきて、現実感が出てきます。陣内家が中心に進んでいくわけですが、名家中の名家。それと対比するのが、世の中は、ネット社会と密につながり、ネット社会で暴走が始まれば、現実の(アニメのなかですが)世の中も混乱してしまうという、何とも現実味があります。描かれる舞台は、昔のいなかの風景ですが、繰り広げられるのは、完全ネット社会。最後には、花札が出てきて、古い、新しい、との両界を行き来しながら、実は現実の私たちの世界をみてみると、少し恐ろしい気がしてなりませんでした。
休み中の、しかも、お盆中ともあり、隣のハリーポッターに負けると劣らず、満席のなか、観てきた、夏の映画。
最後の山下達郎の曲も、なんか、夏休み、終わるのかな、なんて思わせる、そんな終わり方で、少し寂しくなりました。
サマーウォーズ 公式ガイドブック SUMMER DAYS MEMORY
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- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/07/29
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サマーウォーズ 絵コンテ 細田守 (ANIMESTYLE ARCHIVE)
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- 発売日: 2009/08
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evangelion 2.0 エヴァンゲリヲン 破 [映画 le cinema]
びっくりしました。
長かったです。ここまでが。前売りも何度も買ったし(つまり、特別のね)。
これほどまでに人が入っているとは思わなかったので、ギリギリに行ってしまいました。一人だったから、座れたものの、二人なんかで行ったら、だめだったと思います。
さてさて、内容を見ると、TV版のイメージを踏襲しながらも、新しいevaを展開しています。アスカの登場は、意外にも早く、そして、予想だにしなかった展開。
新キャラのマヤものっけから。そして、これまでのevaにはなかったキャラクター展開をしています。
アスカ、マヤもそうですが、最も意外というべきか、予想外の展開を見せたのが、レイ。あれほど、いわば、人間味のある、人の感情を持ち、「人形じゃない」レイの登場には驚きました。水と薬とニンニクラーメンチャーシュー抜きくらいしか記憶がない身としては、碇ゲンドウと食卓を共にし、食事を作ろうとするなんて予想していなかった。その後の展開は、何となく予想がつきましたが。
それにしても、久しぶりのevaになぜか涙してしまった。なぜでしょうね。久しぶりだからでしょうか?これで、ついに、本当のevaの最終章へと歩を進めていくことへの自分自身の恐怖感かもしれません。10年前のeva、そして、新しいeva。それは、連関しているようでいて、この「破」でついに新しいevaの最終章へと進んでいく。「破」。これまでのeva感を破ろうとしたが、今回の「破」なのでしょう。
水族館のシーンや、加持リョウジのスイカ栽培のあたりは、以前にも増して、エコなディスクールになっているのが、少し気にかかりましたが、それでもevaなんですね。
次の 急 (Q)は楽しみです。役者はすべて揃った(?)。さて、彼ら彼女らが、どのように、サードインパクトへ向けて進んでいくんでしょうか。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 オリジナルサウンドトラック SPECIAL EDITION
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2009/07/08
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祝! [映画 le cinema]
テレビとかだと、監督 役者のインタビューが多いですが、ここは、
小山薫堂さんに。
トリセツ、東京ワンダーホテル etc...そして、ラジオ聴きな私としては、ここは、小山さんに、おめでとうを。
全世界(人類)の共通観念と日本の おくりかた。
So Special-Version AI-/おくりびと(初回限定盤)(DVD付)
- アーティスト: AI,ATSUSHI,久石譲
- 出版社/メーカー: UNIVERSAL SIGMA(P)(M)
- 発売日: 2008/09/10
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機内で映画 マンマ・ミーア [映画 le cinema]
というわけで今回、ロンドン行きのVS901で観たのは、
マンマ・ミーア
WALL-E(ウォーリー)
ナルニア国物語 第2章:カスピアン王子の角笛
マンマ・ミーアは、日本では来月封切られます。
どうなんだろう。ミュージカルも観てないし。CFぐらいしか情報源を持たなかったのですが、気軽に見えるところでは、機内で観るにはいい映画かもしれないですね。
当然ミュージカル映画なので、歌が入りますが、明らかにスタジオで後で入れたものと撮影内で歌った(ような)ものが混在していてそれが気になりました。この不景気で、気分がふさぎがちですが、ミュージカル映画でも観て気分転換、というのにはいいかもいしれないです。
内容は、娘の結婚式に、父親と思われる中年男性3人を娘が呼んだことから騒動になります。そして、娘も結婚の重大さにも考えるようになり、どんどんとアバの音楽とともに話は思いもよらぬところへ。
なかなかおもしろかったですよ。メリル・ストリープも、ピアース・ブロスナンも。(ピアースの歌、もう少しかな)
楽しめるミュージカル映画としてはいいのではないでしょうか。そういえば、今年の始めに観た、初映画は、スイニートッドだったことを考えると、明らかに正反対のミュージカル映画であり、ミュージカルに始まってミュージカルに終わる、今年の自分の映画遍歴。
こんな時だからそこ、観たい映画かもしれない。
公式サイト
マンマ・ミーア
マンマ・ミーア!-ザ・ムーヴィー・サウンドトラック デラックス・エディション(DVD付)
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: UNIVERSAL INTERNATIONAL(P)(M)
- 発売日: 2009/01/28
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