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Les Miserables レ・ミゼラブル [映画 le cinema]

レ・ミゼラブル 通称,レミゼ。帝劇で上演されるあれである。しかし,今回は,映画。ついに映画になってしまったか。ミュージカル映画,ここ最近,ヨーロッパ制作モノは非常によいでき,だと思う。逆に,アメリカの制作会社制作のものは,どうも・・・。今回のレミゼ。レミゼの誕生の地のイギリス制作。
舞台のレミゼを知っているとあれも,これも,の音楽とフレーズがでてきて楽しい。帝劇レミゼは帝劇レミゼでその雰囲気はある。けれど,映画のレミゼもしっかり作っている。手抜きしていない。はじめて見るとかミュージカルのレミゼでいまいちよくわからなくて何回も通ったという場合も,この映画を見れば足りる。それだけしっかりと脚本がたてられ,ミュージカルがされ,それでいて,ミュージカル以上にレミゼである。それは,映画であるという特権とも言える。バリケードが小さい気もしないでもない。確かに,帝劇レミゼを見てしまっているとある程度大がかりなものを想像してしまうけれど,本来,あのくらいなんだろう。それにしても,慈愛によって再生したジャンバルジャンの物語は,コゼットら次の世代に受け継がれていく様子は,舞台以上に表現されている。他にものっけから牢獄時代の船もそうだし,パリの街並み,などなどやはり舞台では表現できない,しきれないところは映画の力。これだけでも観る価値あり。それに答えるだけの俳優陣の歌も負けてはいなかった。確か,オーディションも歌重視だったそうな。ヒュージャックマンのジャン・バルジャン,ラッセル・クロウのジャベールもいいし,ファンテーヌのアン・ハサウェイも薄幸の女性を痛いほど演じていた。最後のジャン・バルジャンが召されていく時に登場する様も効果的。コゼットさることながら,一番はエポニーヌだったかもしれない。一番惹かれました。愛と勇気の物語,レ・ミゼラブル。最後にぽろっと来てしまう,この作品の魔力です。
 
 
レ・ミゼラブル (上) (角川文庫)

レ・ミゼラブル (上) (角川文庫)

  • 作者: ヴィクトル・ユゴー
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/12/18
  • メディア: 文庫
レ・ミゼラブル (下) (角川文庫)

レ・ミゼラブル (下) (角川文庫)

  • 作者: ヴィクトル・ユゴー
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/12/18
  • メディア: 文庫
「レ・ミゼラブル」百六景〈新装版〉 (文春文庫)

「レ・ミゼラブル」百六景〈新装版〉 (文春文庫)

  • 作者: 鹿島 茂
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/11/09
  • メディア: 文庫
レ・ミゼラブル~サウンドトラック

レ・ミゼラブル~サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2012/12/26
  • メディア: CD
 

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エヴァは成長する 新劇場版エヴァンゲリヲン:Q [映画 le cinema]

 新世紀エヴァンゲリオンがはじめてテレビに登場したのが,1995年,その続編たる劇場版が1997年-1998年。その後,劇場版の新作としてエヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007年),破(2009年),そして,今回のQ(2012年)である。新世紀エヴァンゲリオンをリアルタイムで観ていた人たちもいい大人である。だって,テレビ版から17年経過しているのだから。
 そんな中,今回のエヴァは,これまでの「時間の止まったエヴァの世界」から抜け出してくれた。いつまで経っても,2015年のまま。現実社会をみれば,もうすぐそこ。進化しない方がおかしい。2015年の初号機によるサードインパクトから14年経っている今回。国連組織ネルフはもうなく,碇ゲンドウの願いを叶えるための組織(表面的にはゼーレではあるが)と化し,ミサト,リツコをはじめとしたネルフに属していた人たちは,ネルフを倒すことを目的としたヴィレに属している。2015年から14年経過しているのだから,彼女らも40代である。
 そんな中,全く変わらないのが,碇シンジ。14年間眠っていたのだから。仕組まれた子どもたちも,体型が変わらない=永遠の14歳。
 この映画の冒頭に出てくる音楽と空浮く戦艦などなどは,「不思議の海のナディア」からインスパイアせれている。ネモ艦長の声(=大塚明夫さん)も出てくるし。後半は渚カヲルが出てくるが,初号機がトリガーとなったサードインパクトの様,これは,この映画と同時に上映される,「巨神兵,東京にあらわる」そのもの。だから,決して夏に開催されていた展覧会を見れなかった人たちのための同時上映ではないのだ。
我々,少なくともエヴァを観る人たちは,2015年の碇シンジら永遠の14歳と永遠のミサトらネルフ職員の姿に幻想を見ていた。アニメだから時間空間は別にどうでもよいだが,実際,エヴァが開いたアニメ市場のエヴァは,これまで“永遠の2015年の出来事”であった。そして,序・破まではそれでよかった。導入だから,今回の2015年から14年経過したQから最後の“I”は,もっと庵野監督のこれまでの仕事の凝縮体になるかもしれない。
 エヴァンゲリヲンという物語は今回のQで14年の月日が経過した。しかし,パイロットたちは成長しなかった。それは,彼ら=エヴァファンへの警鐘でもあろう。エヴァファンは永遠の14歳(あるいはそれ以外のキャラクター)の幻想を追い求めている。それは確実に時が止まっている。実生活実社会は,1秒1分1時間1日時は経るもの。君たちも14歳以上年取ったでしょ。だから成長せよ,前を見よ,現実を生きよ,との庵野秀明からの警鐘と捉え,次回の終幕に期待したいのです。
桜流し [DVD]

桜流し [DVD]

  • 出版社/メーカー: EMI MUSIC JAPAN
  • メディア: DVD
Shiro SAGISU Music from“EVANGELION 3.0”YOU CAN(NOT)REDO.

Shiro SAGISU Music from“EVANGELION 3.0”YOU CAN(NOT)REDO.

  • アーティスト: サントラ
  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • 発売日: 2012/11/28
  • メディア: CD
 

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最強のふたり Le intouchables [映画 le cinema]

最強のふたり。フランス本国でも大盛況だった映画。やっと観ることができました。さて,この原題Les intochebles つまり,アンタッチャブルである。相容れない,そもそもかけ離れていて触れることができない,そんな意味かな。
この映画は,もともと現実の話があって,その二人は現実にいる,それをもとにした映画。とにかく,フランス映画である。全国規模でフランス映画を観ることができるというのはなかなかない。
グライダーの事故で脊髄損傷を受け,半身不随となった富豪フィリップと,刑務所出でパリの下層民,ドリス。この相容れない二人が次第に合いつながっていく様を描いている。淡々とした展開でなく,フランスのエスプリたっぷりのコメディである。ここがいい。Earth wind & fire のSeptemberと芸術の価値が鍵かもしれない。フィリップは,ヴィヴァルディの四季・夏がロックだと感じ,それに呼応するように,ドリスはEarth を持ち出し,皆でフィリップの誕生日を踊って祝う。フィリップは,前衛絵画を4万euroで買い,一方,ドリスは自分のインスピレーションで描いた”前衛絵画”を,フィリップは彼の友人に1万euroで売る。芸術への価値観というもの,芸術の意味,価値観の違いというのは,誰が決めるのか?言い値で決まる?なんて問うているのは,さすがエスプリたっぷりのフランス映画。
この価値観の違いこそが彼らの結びつきを強くしていく。最後には(最初の場面でもあるけれど),アストンマーティンでパリの街をぶっ飛ばす光景と最後の最後のドリスの粋な演出は,端から見れば相容れない二人が本当の友人なったんだと感じさせる。
健常者と障がい者の二人の映画がわかり合える映画と観るよりも,フランス(パリ)には地位階層があるけれど,そんなのは関係ない,それぞれの立場の違いはあれど,精神的に,実際に面と向かったらどうかという人と人とのコミュニケーションの物語,人の価値観とは何かと観るほうが正解かもしれない。確かに,健常者と障がい者,あるいは,富豪と貧困層,価値観の違いという映画としては描きやすい二項対立の主題はあるのだけれど。
 コメディで全く飽きさせないのはさすが。コメディコメディすぎない。二人の現実も随所に(いや,これが本題なのだろうけれど)直視する。コメディでありつつも,主題としては単純でありながらも,感動作になっているのはフランスらしい。

補足,パリを舞台にしているだけあって,随所にパリの風景も観ることができる(ルーブルとかポンデボザールとか,エッフェルとか)なんてのもこの映画の特徴でもある。
またパリに行きたくなりました。
Intouchables

Intouchables

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ais
  • 発売日: 2012/03/20
  • メディア: CD


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おおかみこどもの雨と雪 [映画 le cinema]

とても優しい物語。反面、(おおかみ)こどもを産み、育て、生きていくことの大変さ、楽しさを教えてくれる作品。
大学生の花は、奨学金をもらい、クリーニング店でアルバイトしながら大学生学を送っている、至って普通の大学生。あるとき、長身のイケメンが同じ講義を聴いていた。実は同じ大学の大学生ではなく、配達員の隠れ聴講生。その男に惹かれていく花。デートを重ね、その彼の真実を見ることになる。・・・・
 
この作品を通して、花はとても強い。ただ強いのではなく、楽しもうとしている。2人のおおかみこどもを、動物のオオカミと人間のこど両方を育てなければならない。富山の山奥の民家を一人で借り、彼らを自力で育てていこうとする。傍らで頑固なおやじが見守る。自然にあこがれて、ほとんどが途中で逃げ出していく中、花は、2人のおおかみこどもを育てる。一生懸命なのだろうけれど、楽しんでるようにも思える。畑の作り方一つ知らない花は、近所の人の手、知恵を借りながら、自給自足する。自給自足というのは言葉ではとても光る言葉であるけれど、実際は大変。近所の人たちとの交流がなければできない。すべて自給自足とはさすがにいかないから。韮崎のおじさんはとても頑固で、無口であるが、花の一生懸命さに力を貸し、花の笑顔と笑いに「何がそんなにおかしい。笑うな」と言う。確かに厳しい。畑一つ育てるのは。でも、花は、笑顔を絶やさない。ここが、花の強さである。

のびのびと成長する2人のおおかみこども。
人間の生活に順応していく 雪。反面、人間の生活にはなじめず、森の先生のところに毎日通う、雨。彼は子どもの頃、どうしたのだろうと思いながらも、2人のそれぞれの成長を楽しむ花の忍耐力の強さ。

この作品に流れる音楽はとても繊細である。アン・サリーのアンニュイな歌も効果的。雪原を翔る映像と音楽もうまくマッチしている。この作品は、花の子育て奮闘記であるとともに、人とのつながりを問う物語である。人は一人では生きていけない。花は彼との出会いがあったからこそ、雪と雨が生まれたのであり、彼らがおおかみこどもであったからこそ(かどうかはわからないが)、彼らの成長に最適な場所を探し、山奥を選ぶ。その中で生活するのは大変であるけれど、近所(といっても遠いが)の人たちとの交わりがあってこそ、野菜を栽培し、米をもらい、生活することができた。

細田作品は、元気な女子と静かな男子が登場する。今作も、元気な女子 花、雪。静かな 彼 と雨が対照的に登場する。男子が静か=気弱ではない。彼はおおかみおとことして苦労して生きてきたし、雨も、森の先生と出会い、強くなり、ついに森の中で生きることを決意する。反面、雪は、最初は闊達な女の子であったけれど、小学校生活の中で、女の子らしさが生まれていく。その対照的な様にもそれぞれの生きる道に笑顔でエールを送る花はやっぱり、強い。
 
 
おおかみこどもの雨と雪 (角川文庫)

おおかみこどもの雨と雪 (角川文庫)

  • 作者: 細田 守
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/06/22
  • メディア: 文庫
おおかみこどもの雨と雪 ARTBOOK

おおかみこどもの雨と雪 ARTBOOK

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/08/25
  • メディア: 単行本
SWITCH Vol.30 No.8 特集:細田守『おおかみこどもの雨と雪』はこの世界を祝福する

SWITCH Vol.30 No.8 特集:細田守『おおかみこどもの雨と雪』はこの世界を祝福する

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: スイッチパブリッシング
  • 発売日: 2012/07/20
  • メディア: 大型本
アニメスタイル001(特別付録『おおかみこどもの雨と雪』設定資料集) (メディアパルムック)

アニメスタイル001(特別付録『おおかみこどもの雨と雪』設定資料集) (メディアパルムック)

  • 作者: 小黒祐一郎
  • 出版社/メーカー: メディア・パル
  • 発売日: 2012/07/20
  • メディア: ムック
劇場公開映画「おおかみこどもの雨と雪」オリジナル・サウンドトラック

劇場公開映画「おおかみこどもの雨と雪」オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2012/07/18
  • メディア: CD
 

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ヒューゴの不思議な発見 [映画 le cinema]

映画創世時期 リュミエール兄弟とジョルジュ・メディエス へのオマージュ作品である。
この映画の中で機関車が駅舎から飛び出すシーンがある。これは、リュミーエル兄弟が撮った、機関車が駅のプラットホームに近づいてくる様が、「まるで本当に我々のほうに機関車が近づいてくる」と当時の人たちが印象に持ったのと同じように、私たちは、この劇中に登場する機関車がレールを外れ、駅舎を突き抜けていくシーン(本当にあった事故だそうだが)をみると、3Dではなくとも、その迫り来る機関車が、まるで私たちのほうに向かってくる、まるで轢かれそうになる、という感覚を持つ。当時の人が味わった感覚をこの映画は、3D(あるいは2D)の映画技術によって体感することができる。スコセッシが、子どもの映画を!?ではなく、この映画こそ、映画(技術)の進化を改めて問い直した作品なのかもしれない。だからこそ、作品中に、リュミエール兄弟の映画小屋があり、メディエスの登場があり、さらにヒューゴ少年が修理する父の形見の機械人形は、忘
れ去られた映画の形見でもある。なかなかこの手の映画をしっかり作るというのは、それだけ勇気がいる。興行的にどうか、とか。3D映画やデジタル映画でフィルム映画が薄れてきている今だからこそ、映画が生まれ、戦争や時代の嵐の中で、実験映画や娯楽映画が捨てられていったことがあることを再認識させ、今、映画とは何かを問う映画でもある、と思う。
 
ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)

ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)

  • 作者: ブライアン セルズニック
  • 出版社/メーカー: アスペクト
  • 発売日: 2012/01/25
  • メディア: ペーパーバック
ヒューゴの不思議な発明 オリジナル・サウンドトラック (Howard Shore / Hugo - original soundtrack) [日本語帯・解説付輸入盤]

ヒューゴの不思議な発明 オリジナル・サウンドトラック (Howard Shore / Hugo - original soundtrack) [日本語帯・解説付輸入盤]

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Howe Records / King International
  • 発売日: 2012/03/24
  • メディア: CD
ヒューゴの不思議な発明 [DVD]

ヒューゴの不思議な発明 [DVD]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD
ジョルジュ・メリエスの月世界旅行 他三編/映画創世期短編集 [DVD]

ジョルジュ・メリエスの月世界旅行 他三編/映画創世期短編集 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 有限会社フォワード
  • メディア: DVD
 

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愛の罪 [映画 le cinema]

はじめからインパクトのある映像である。そして、これが、東電OL殺人事件からインスパイアーされた映画であることはすぐに想起できる。昼間は、エリート(今作では、大学助教授)、夜は風俗嬢。この表と裏の顔をもつ一人の女性の姿を、内向きで貞淑な妻の心が開放されて、外向きに(劇中では、淫乱に)なる過程を通して、どうしても「外の社会」は「男社会」であると信じて疑わなかった、21世紀直前の渋谷円山町を通して描いている。そう、20世紀の日本は、男が外(会社という社会、社会という会社)、女は中・内(家内という中・内)であるという固定観念が定着していた。1990年後半、男女雇用機会均等法以降の女性の社会進出が促進されたことにより、女性が外で活躍する機会が多くなってきた。大学助教授である尾沢は、女性としてエリート、名誉ある地位にある。彼女は、男が外、女は内という概念が崩れていく様を体現している。昼の社会は、外向けの顔、夜の顔は、内向けの顔(ここでいう、淫売、淫乱、娼婦の、)。「落ちるところまで落ちろ」。彼女は、いずみに言う。内の自己、外の自己、彼女は、大学内でも内の自己をひけらかす。いずみにその姿を見せることで、外的抑圧に押しつぶされてきた内なる自己の開放を促している。セックスとは、契約である。「愛のないセックスは金を取れ」。尾沢のこの言葉に、この作品の主題のひとつが象徴されている。まさに、愛の罪。
 この二人の第三者的視点で見ていくのが、水野美紀演じる刑事和子である。良妻賢母。外でも確固とした地位がある。しかし、劇の始まりのみせる和子は、ホテルで不倫をしている姿である。私は、何なのか?どういう存在なのか。この作品は、このテーゼを、男女雇用機会均等法によって社会進出が進んだ1990年代後半のあの象徴的事件を題材に、3人の女性が、内ある自己から外の自己へ開放されていく様を描いている。自己とは何か。精神分析学では、社会の発展とともに研究され、研究の主対象としてあげられてきた私という個の自己が、外と内があり、それが社会の発達とともに分裂状態になっていった。しかし、自己はそれほど強固ではない。外も内も私という自己なのだ。その薄皮も一つもない表と裏の自己を制御するには、まぎれもない自己であるが、本作に描かれる3人の女性と1人の古典的女性の言動は、エリート、貞淑、良妻賢母といった、古典的固定観念としての女性が、開放されていく瞬間を描いたものだ。女性の様を単にエロティックに描いた作品として捉えるべきではない。メディアは、なぜか女優が脱ぐことに注目してしまっている。おしい。けれど、園子温に乾杯。
恋の罪―愛にさまよう女たち (リンダブックス)

恋の罪―愛にさまよう女たち (リンダブックス)

  • 作者: 園 子温
  • 出版社/メーカー: 泰文堂
  • 発売日: 2011/11
  • メディア: 文庫
愛のむきだし [DVD]

愛のむきだし [DVD]

  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
  • メディア: DVD
    冷たい熱帯魚 [DVD]

    冷たい熱帯魚 [DVD]

    • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
    • メディア: DVD


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はやぶさ HAYABUSA [映画 le cinema]

たぶん、これは地味な映画だったのかもしれません。しかし、堤幸彦監督ら制作陣のマジックと演技派俳優たちの芝居によってこの作品は、とてもワクワクして、涙する映画となっています。

宇宙研(宇宙科学研究所、のちJAXA)の数々の仕事は、たぶん見かけ上は日常生活上最も関わりのない仕事かもしれません。しかし、私たちの日常生活にあるモノの多くは、宇宙に行った結果の生成物というのも多いわけです。文科省の予算が出し渋るのは、見かけ上の成果がないと思えてしまうからです。しかし、実際は、私たちに宇宙というロマンを与え続けてくれる機関でもあるのです。基礎研究、特に宇宙関係や医療関係、理学系の研究は、本当にそうなるのかという予測が不明瞭なだけに予算のない中でも、考え、行動していかなければなければらないのです。この映画の主人公、水沢蛍もその一人。継続的に考え、行動していく覚悟があるかどうか、彼女自身の成長物語としてもこの映画は描かれています。VFXやNASAなどの映像もさることながら、日本の科学技術とそれに挑む人たちの物語です。

この映画、「はやぶさ(HAYABUSA)」は、太陽系を周回する小さな惑星(小惑星)に私たちの起源を求めた宇宙研の人たちが活躍するドラマです。はやぶさを飛ばすまで、そして、飛ばしてからミッションを遂行させ、地球に「帰還」するまでを描いています。

この「はやぶさ」については、他2つの映画が後を控えているようですが、この映画の元になったのが、はやぶさ君日記(ブログ)ということ、と堤監督らしさのあるコミカルなタッチもあるので、幅広く観ることができる映画かもしれません。

はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話

はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話

  • 作者: 川口 淳一郎
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2010/12/10
  • メディア: 単行本
    はやぶさ君の冒険日誌

    はやぶさ君の冒険日誌

    • 作者: 小野瀬 直美
    • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
    • 発売日: 2011/07/29
    • メディア: 単行本
      はやぶさ-HAYABUSA サウンド・トラック

      はやぶさ-HAYABUSA サウンド・トラック

      • アーティスト:
      • 出版社/メーカー: ㈱アリオラジャパン
      • 発売日: 2011/09/28
      • メディア: CD

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自らの恐怖との葛藤 ブラックスワン [映画 le cinema]

白鳥の湖は、バレエの中でも大変有名である一方で、主役は、白鳥という純粋と黒鳥という誘惑を演じなければならないという大変難しい作品でもある。この作品の主役に選ばれようとするのが、主人公ニナ。ニナは、元ダンサーの母親の献身的な寵愛と期待に支えられている。ニナもそれに応えようとする。プリンシパルのベスが、引退を決め、次の作品のプリンシパルに選ばれようとするシティバレエ団のダンサーたち。この映画の中でもダンサーの一人が言っているし、最近は多くのカンパニーが置かれている実情はそうだが、「バレエを観る人なんかいない」。有名カンパニーは、有力者の力があってこそ今なりたっている。そんな現実もこの作品では描いている一方で、ダンサーの彼女(あるいは彼ら)たちの主役への競争意識は強い。それは、単なるお稽古ごとの一つから職業として選んだ彼らの意識の現れである。だが、世間で注目されるダンサーというのは、世界に数えるくらいしかいないし、それを長年維持し続けるというのは並大抵ではない。このブラックスワンという作品は、ニナの白鳥の湖というバレエの主役を射止めたいという気持ちから、それを勝ち取ってからの苦悩を描いている。ニナが主役を芸術監督に必死に取り入って射止めたというのが余り伝わってこない。芸術監督ルロワは、ニナの実力を認めてはいる。しかし、そこまでの意志決定過程があやふやな印象になってしまうため、少し物足りない。白鳥の湖の主役に抜擢されたニナは、主役を演じることの次第に重責を追っていく。これが、白鳥の湖、プリンシパルになること、プリンシパルであり続けることの重責。

ニナは、次第にこれまで以上に強迫性障害様の症状が増し、さらには幻覚や妄想に至る統合失調症のような症状も表出してくる。観ている側からしても、これが現実なのかあるいは、ニナのみている幻覚や妄想=虚構なのかが判別しづらくなる。それは、彼女が本番の舞台に上がるまでと本番舞台に“病を押してまで”上がり、白鳥を演じ、次の黒鳥という欲望を演じた時に最高潮に達する。虚構と現実、果たして私たちはニナのどちらを体感しているのか。最後のシーンは白鳥と黒鳥という二面性を演じきったニナの果てた姿が無理矢理現実に引き戻したような強引なセッティングではあるけれど、久しぶりに2時間の精神的に緊迫した映画でした。それは、サスペンスというよりも、ヒッチコックのサイコを観ている感覚に近いかもしれません。ナタリー・ポートマンも好演しています。体重を9kg落とし、バレエダンサーを直球で演じています。
レイトショーで観ましたが、かなり疲れる映画です。心して!
ブラック・スワン オリジナル・サウンドトラック

ブラック・スワン オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ
  • 出版社/メーカー: SMJ
  • 発売日: 2011/04/27
  • メディア: CD

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『告白』映画と小説 [映画 le cinema]

『告白』は、文字通り告白(独白)でストーリー展開する。娘の死に関連する人たちがそれぞれに、自分の置かれている状況を「告白」することにより、真相とそれぞれの心の葛藤と悩みが混在しながらも、表出されていく。小説も映画もどちらも、森口先生の「告白」から始まるが、森口先生の「告白」は、他の「告白」とは違い、むしろ語りに近い。映画では、松たか子がその役である。ばらばらな教室の中であれほどまでに無表情で淡々と「語る」森口先生の姿は、一種怖さ、恐ろしささえ感じ、それと対をなす生徒たちの行動をみると、おさなさを感じる。特に、HIVと語り出した時の反応は、無知そのもの。そこに監督の作りのうまさと、松たか子の演技のうまさがある。あの状態で平生に淡々と語り、そこに恐ろしさまで感じさせる演技はそうできない。

 この「告白」は、森口先生の語りと犯行を行ったAB、二人の少年の『苦悩』が中心である。二人の少年の「告白」は、「生きる(あるいは、生きている、あるいは、端的に、生)」ことを自分自身で確かめるための行為の告白である。それが人を殺すことであり、動物を殺してみること、である。それは罪であり、残虐ではあるけれど、実は人は誰しも持っていることなのだと思う。自分自身が生きていることを確かめるためには、死を経験しなければならない。それは人の永遠のテーマであり、避けて通ることができない悩みである。それは哲学者が一定の見解を出しているが、実際は解決することができない人それぞれのテーマなのだ。それをこの『告白』は、小説にし、さらに映像化した。映像化された『告白』は、彼らの「告白」もそうだが、演出の大胆さを欠かしてはならない。嫌われ松子もそうだが、テーマとしては深刻であるが、観てみると、演出と音楽の大胆さに、通常だったら眠くなってしまうようなテーマも、最後までビビッドに訴えかけてくるので、観てしまう。演出によってこんなに違うんだな、と思わされる。だって、今回だって、まさかRadioheadが出てくるとは思わなかったし、Boris が多様され、AKBがちらっと出て、アースで踊るとは思わなかった。ロックな映画なんです、実は。

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

  • 作者: 湊 かなえ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2010/04/08
  • メディア: 文庫







これだけ聴いてもいいです。
告白 オリジナル・サウンドトラック

告白 オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: 渋谷慶一郎,渋谷毅
  • 出版社/メーカー: ホステス
  • 発売日: 2010/05/26
  • メディア: CD

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INVICTUS インビクタス 負けざる者たち [映画 le cinema]

遅まきながら、この映画観てきました。はじめは、シャーロック・ホームズにしようと思っていたのですが、レイトショーにもかかわらず、かなり混んでいたので、こちらにしました。先日行われたアカデミー賞にもノミネートされて作品でもありますし、最近精力的なクリント・イーストウッドの作品でもあります。

最初は、マンデラ、南アフリカ、アパルトヘイト、クリント・イーストウッドと並べると重たい作品なのかな、と思ったのですが、観ていくと、なかなかいい作り方だと思いました。というのは、観ていてある意味飽きないのですね。人種差別という重い問題を根底で描きながらも、南アフリカの精神的“統一”に燃えるマンデラの奮闘の描き方がとてもビビットなんです。わくわくする。同時に、ラグビー南アフリカ代表選手との交流も結果的に政治的なものであれ、心地よく描かれているのが印象的でした。

モーガン・フリーマンは、マンデラを好演していましたし、マット・デイモンのラグビー姿もかっこいい。それに脇を固める俳優陣も、しゃべりをみているとしっかりと現地のなまり(実際は知らないけれど)やクイーンズイングリッシュなまりを多用していました。社会派クリント・イーストウッドらしい作品です。

ラグビーシーンも勢いがあって、わくわくするし、いい時を過ごしたと思わせてくれる映画でした。

音楽もいいですね。サントラコレクションに入りそうです。


インビクタス〜負けざる者たち

インビクタス〜負けざる者たち

 


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