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ヒューゴの不思議な発見 [映画 le cinema]

映画創世時期 リュミエール兄弟とジョルジュ・メディエス へのオマージュ作品である。
この映画の中で機関車が駅舎から飛び出すシーンがある。これは、リュミーエル兄弟が撮った、機関車が駅のプラットホームに近づいてくる様が、「まるで本当に我々のほうに機関車が近づいてくる」と当時の人たちが印象に持ったのと同じように、私たちは、この劇中に登場する機関車がレールを外れ、駅舎を突き抜けていくシーン(本当にあった事故だそうだが)をみると、3Dではなくとも、その迫り来る機関車が、まるで私たちのほうに向かってくる、まるで轢かれそうになる、という感覚を持つ。当時の人が味わった感覚をこの映画は、3D(あるいは2D)の映画技術によって体感することができる。スコセッシが、子どもの映画を!?ではなく、この映画こそ、映画(技術)の進化を改めて問い直した作品なのかもしれない。だからこそ、作品中に、リュミエール兄弟の映画小屋があり、メディエスの登場があり、さらにヒューゴ少年が修理する父の形見の機械人形は、忘
れ去られた映画の形見でもある。なかなかこの手の映画をしっかり作るというのは、それだけ勇気がいる。興行的にどうか、とか。3D映画やデジタル映画でフィルム映画が薄れてきている今だからこそ、映画が生まれ、戦争や時代の嵐の中で、実験映画や娯楽映画が捨てられていったことがあることを再認識させ、今、映画とは何かを問う映画でもある、と思う。
 
ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)

ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)

  • 作者: ブライアン セルズニック
  • 出版社/メーカー: アスペクト
  • 発売日: 2012/01/25
  • メディア: ペーパーバック
ヒューゴの不思議な発明 オリジナル・サウンドトラック (Howard Shore / Hugo - original soundtrack) [日本語帯・解説付輸入盤]

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Howe Records / King International
  • 発売日: 2012/03/24
  • メディア: CD
ヒューゴの不思議な発明 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD
ジョルジュ・メリエスの月世界旅行 他三編/映画創世期短編集 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 有限会社フォワード
  • メディア: DVD
 

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サイトウキネン 火刑台のジャンヌ・ダルク 初日 [音楽 musique]

8月19日 火刑台のジャンヌ・ダルク 初日。
こういった芝居やオペラなどは、初日から楽日を迎えるまで、毎日違うのが常。むしろ、毎日進化していくといったほうがよいかもしれないが、初日は初日の出演者と観客双方にある種の緊張感があるのは否めない。

今回は、指揮者山田和樹 である。ここ最近は、小澤征爾指揮以外の演目ばかりみていたから、サイトウキネン=オザワという免疫はなくなってきている。

「火刑台のジャンヌ・ダルク」は、有名な百年戦争を終結させた聖人である、ジャンヌ・ダルクが、火あぶりの刑に処せられる、その時のジャンヌ自身の回想を描いた劇的オラトリオ。

今回の指揮は、山田和樹。ジャンヌ自体は、19年ぶりの演目。だから、19年前の演奏を聴いた辛口な人たちの評価はいかがだったのでしょう。

客席には、小澤征爾一家もかけつけ、静寂の中始まりました。

この作品、そして、今回は、実にフランス語に忠実というか、フランス語の詞を大事にし、
フランス人が出演しています。ジャンヌ役のイザベル・カラヤン自身はドイツ人だろうが、彼女自身はフランスで訓練を受けている。語り役は、んっ。これは、コメディーフランセーズの人かな、と思ったら、案の定、コメディーフランセーズの役者でした。さすがです。コメディーフランセーズ。日本ではなかなか玄人好みですが、パリに行けば劇場でやっていますので、興味のある方は是非本場のフランス流の芝居を堪能できます(場所は、ルーブルの隣です)。フランス語かじりの私としては、フランス語の台詞、歌、そして、芝居が心地よく興味深かったです。フランスのウィットに富んだ芝居といったらいいのかな、芝居好きのほうが今回は楽しめるかもしれません。
そして、芝居自体も子どもらの衣装もさることながら、いろいろな虫たちも出てきますし、その子の歌もうまい。独唱部分もしっかり、です。これから楽日までが楽しみですね。
演奏も賛否いろいろあるかもしれませんが、フランス的な、いわば、やわらかく、優雅に、そして、機敏に。それぞれが十分に発揮できていたと思います。ドイツクラシック的な演奏ではなく、むしろ、パリ管的なといったほうがよいかもしれません。言い過ぎ?若さ=冒険というより少し守りに入ってしまったかな、とも言えます。その点は残念。でも、全体的には満足。

でも、プログラム(\2,000)みると、演奏者はずいぶん変わりました。初期メンバーはほとんどいません。以前から次第次第に若手になってきていて、受け継がれて行っているという様子は受け取れていたのですが、小澤さん頼みから次の段階へ。一人の頼る時代は終わりです。オケ、フェスティバル自身が魅力あるもの出なければなりません。
サイトウキネンは、十分に魅力あるオケに育ってきていると思います。
 
オネゲル:火刑台上のジャンヌ・ダルク

オネゲル:火刑台上のジャンヌ・ダルク

  • アーティスト: 小澤征爾,オネゲル,ロンドン交響楽団
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
  • 発売日: 2012/10/03
  • メディア: CD
オネゲル:劇的オラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」(全曲) 交響的詩篇「ダビデ王」(全曲)

オネゲル:劇的オラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」(全曲) 交響的詩篇「ダビデ王」(全曲)

  • アーティスト: ボード(セルジュ)
  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2008/12/17
  • メディア: CD
孤独な帝国 日本の1920年代―ポール・クローデル外交書簡1921‐27

孤独な帝国 日本の1920年代―ポール・クローデル外交書簡1921‐27

  • 作者: ポール クローデル
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 単行本
 

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京都と新大阪の [旅行 voyage]

新大阪から京都に近づいたあたり、山崎、がある。いつもここを通過するたび、この山崎にある、サントリー山崎蒸留所を探す。知らぬ間にすぎてしまったり、雨の中でガスってしまっていると見えない時、寂しい気分になる。反対に、夕暮れあたりからのライトアップをみると得した気分になる。
最近、ハイボール結構飲みことが多くなった。それも影響して、以前にも増して、この"山崎"を見ることが、一瞬であるけれど、楽しみになっている。

 決してサントリーの回し者ではないですが、でも、この場所を通るのが楽しみです。

サントリー山崎蒸留所


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つつましく生きる、ガラスの動物園 [芝居 theatre]

「ガラスの動物園」
bunnkamura シアターコクーン
4月3日 まで  当日券ある場合あり

シスカンパニー

アマンダ 立石凉子
ローラ 深津絵里
トム 瑛太
ジム 鈴木 浩介
演出 長塚圭史
シスカンパニー


とても繊細なドラマである。第1部は、ほとんど独白で、母子に存在する不安と社会の不安定さが綴られる。

トム(瑛太)がまず登場する。このトムの当時の背景の説明をする。この背景の場面がとても重要である。なぜなら、そこから始まるトムを含む家族とその友人の物語の序章であることは言うまでもないが、同時に物語の根幹であるからだ。1930年代といえば、ドイツ・ナチスの台頭とナチズムのヨーロッパ各地への浸透し始め、スペインのゲルニカ襲撃(1937年4月)、日本では、デフレ、日中戦争、そして舞台であるアメリカでは、金融崩壊とニューディール政策、時代は、再び戦争の時代への階段を上っていくその直前の時代である。

この芝居の中心である、アマンダ(母)、ローラ(姉)、トム(弟)の母子は、遠距離電話事業と浮気し出て行ってしまった父の帰りをわずかばかり期待しながらも、つつましく生活する家族である。この家族の中心は、アメリカ南部育ちのアマンダ(母)である。ローラは、足に障害を持ち、内向的、トムは、反体制的で、倉庫で仕事をしながら、詩を書くという、モダンに夢を持つ青年である。南部育ちの母は、お祈りを欠かさない。

彼らの生活は慎ましやかである。その中でも、わずかばかりでも幸せを探している。物語の第1幕は、ほぼ独白に近い形で進んでいく。それぞれが個々の不安感を提示させていく。それは、個々ではなるが、実は、当時の社会全体への不安さを体現している。1部から2部へと橋渡しするのが、トムの先輩同僚・ジムである。ジムは実はローラの高校時代の同窓生である。2部は彼が中心となる。夕食会に招待され、ローラと会話するうちに、ローラの引っ込み思案、不安神経症的な要素を取り去ろうとする。例えば、彼女の義足の音、彼女だけが聞こえ、他には聞こえなかった。そういえば、第1部のビジネススクールも途中で辞めてしまっている彼女だが、自分自身の存在に自身が不安、彼の言葉で言えば、インフェリア-コンプレックス である。ジムの明るく、素直な発言に次第にローラは心を開いていく。そして、彼女が大事にしていたガラスの動物園にある一つのガラスをあげようとするが。。。。

その芝居の中心は、もちろん登場人物4名である。
しかし、今回観ていて、登場するたびに鳥肌が立ってしまったのが、ダンサーの存在。場面場面でダンサーが舞台に登場し、ダンス(舞踏)と小道具を”知らぬ間”に移動させて、”知らぬ間”に去っていく。ここにこそ、今回の芝居の妙があると思ったのです。そして、原作の戯曲にはすでに多くの指示が書かれていますが、それにとらわれずに作り上げた演出にも拍手である。この作品、独白は時代背景をそれぞれの登場人物に投影させているわけですが、とても繊細な芝居なのです。特に、ローラは、障害とそれに伴った不安な振る舞いは、発する声もか細く、聞こえにくい、それこそが、この作品の狙いだと思います。か細く(=つつましくも)も、その中でも幸せをみつけて(=ガラスの動物園)、生きていこう、という、とても苦しい時代(アメリカにとっても)の生をうまく描ききり、現代によみがえらせたのだと思います。
また、この芝居は、それぞれが生きていくという中でも、家族のきずな、母子のきずな、は切っても切れないものであることも示しています。

今回、実は深津絵里さんを中心に観たいと思っていたのですが、ダンサーさんにやられました。その点でも是非、観て欲しい芝居です。

ガラスの動物園 (新潮文庫)

ガラスの動物園 (新潮文庫)

  • 作者: テネシー ウィリアムズ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1988/03
  • メディア: 文庫
    欲望という名の電車 (新潮文庫)

    欲望という名の電車 (新潮文庫)

    • 作者: T.ウィリアムズ
    • 出版社/メーカー: 新潮社
    • 発売日: 1988/03
    • メディア: 文庫

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フェルメールからのラブレター展 [アート art]

今年はフェルメールの当たり年?
銀座では、フェルメールの全作品リプリント展が開催中ですし、青いターバンを巻く少女も今年日本に来る。そんな中、Bunkamuraで開催中の「フェルメールからのラブレター展」に行ってきました。平日昼間にもかかわらず、かなり混雑。しかたない、フェルメールだから、と思うのですが、例えば、この展示の中で展示されているフェルメールの絵の一つをオランダで観た時、そこだけたくさんの人で混雑していたということはありませんでした。パリルーブルでもそう、ロンドンナショナルギャラリーでもそう、ほかもそう、他の展示と同等の”扱い”でした。それほど日本人にとって、フェルメールは特別なものなのでしょうか。あるいは、誰かが特別なものにしてしまったのか、どちらにせよ、日本の”○○展””特別展”は混んでいます。しかたない、ここは日本。
フェルメールからのラブレター展
さて、このフェルメール展、当然のことながら、フェルメール作品だけではないわけです。3作品はフェルメールですが、他の作品もそこそこあるわけです(Bunkamuraなので、たくさんというわけではないのですが)。

この展覧会の企画は、とてもおもしろいと思いました。よくある代表作家とその周辺、その時代の同時大作家をピックアップしただけでなく、「手紙」というメディアを主題にしているところです。それぞれの作品に、「手紙」が描かれ、それを読む人たちが出てきます。手紙というのは、「書く」という行為と「読む」という行為があるわけですが、それぞれが出て来て、その中心が、フェルメールの3作品なわけです。当時のオランダ、フランドル地方の識字率、書くという技術が、上位層だけでなく、農民などにも十分にあったということを示しています。展示作品は確かに少ないですが、テーマ、主題がしっかりしている展覧会は十分に見応えがあります。この「フェルメールからのラブレター展」は、そんな展覧会の一つです。

Bunkamura ザ・ミュージアム
3月14日まで
フェルメール 光の王国 (翼の王国books)

フェルメール 光の王国 (翼の王国books)


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